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コラム「マダムの部屋」
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マダムの部屋
ちょっとちらかってるけど、気にしないでゆっくりしてって!

マダムの部屋-3-
「JAPAN」って何?


 サッカーで日本が初めてW杯予選リーグを1位でクリアしたニュースで国内は盛り上がっている。自分に夢中でふだんあまりテレビを見ない私だが、W杯は結構観戦している。何と言ってもホームで、自分たちの持つべき力を冷静に出し切って淡々と進んでいく選手たちの姿が興味深いのだと思う。

 とかく日本選手というのは、大一番に弱い、と言われている。私自身も、スケルトンを始めてから自分の「弱さ」を感じ続けている。特に、2001−02シーズンは、公式練習で5番以内に入ったことも数回あったけど、ワールドカップの最高順位は14位。そんなわけでメンタリティーについてはフィジカル面と同様に課題として考え続けていた。心と身体はつながっているから、もちろん、心の弱さは技術や体力のなさともいえるけど、それにしても、13人中12位という悲惨な成績を残してしまったオリンピックを終え、それだけでない何かがあると、さらに強く考えるようになった。

 共に戦う欧米の選手たちは、発する「気」が強い。
それはどこからくるのだろう−と。

 ふらふらとヨーロッパの町に出かけ、ぐるぐる歩きながら考えた。
教会でひと休み。恒常的に神さまに祈りを捧げる習慣を持つ彼ら。神に向かい合うことは自分自身に向かい合うこと。それは、自分の存在意義を確認する時間でもある。国境が接しているからか、民族性のようなものが自ずと備わっているように思う。
また、アメリカでは星条旗が家に貼ってある場合もあるし、アメリカだぜーというように、服装やらなにやらにも表現されていて、それらを前面に押し出している。一言で言えば愛国心が強い。自分が「アメリカ人」であることに誇りを持っている。

 じゃあ、日本人って何さ?と考えた時、私の頭には何も浮かばなかった。歴史も習ったけど、自分の体の中には身に着いていない。これまで好んで着た服はイタリアのものだったし、食事やライフスタイルも欧米に憧れていた。音楽も西洋のものが好きで、いつか海外に住んでみたい、それもヨーロッパに…と思っていたから。

 自分を振り返る中で、日本人に生まれた自分という揺るがないはずのものは、根こそぎ抜け落ちていることに気付き、唖然とした。取材している中で何人かの芸術家たちが語っていた言葉を思い出した。それは「自分のルーツを探り続けている」という意味合いのことだったが、人の心を揺らす表現をしている人たちは必ずこの作業をしていた。

 スポーツにも同じことが言えるのではないか、と仮定すれば、世界で通用する揺るぎない強い心身をつくるには、「個」である自分そのものだけでなく、生まれ育った環境を含めた歴史を理解し、含め併せて知る必要がある。きっと、日本人のよさ、強さが見えてくるはずだ。そんなことを考える今日この頃。最近、受験生のころのように、内にこもって「勉強」するのも楽しい。

 ただ、過去や、ルーツを知るだけでなく、「今」という現実をアレンジしていく必要もあるだろう。そこで、ようやく強さにつながるのではないだろうか。

 日本サッカー界は、「Jリーグ百年構想」と言われる理念を掲げて動いている。外国からの情報や、人材(トルシエ監督もその一人)を上手に使いこなしている。報道によると、トルシエは「組織力」を強調し、チームづくりをしたといわれている。いまの日本人は「個」に走りがちだけど、トルシエは集団で力を発揮するという本来日本人が持っていたされる特質を見抜いて統率することによって、日本選手の力を引きだしたのかもしれない。

 W杯で「JAPAN」を知ろう!

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